デス・オーバチュア
第268話「白と青の来訪者」



「自分だけに〜解るプライド賭けて〜♪」
「…………」
アイナは歌いながら、タナトスの後をついてきていた。
「命まで〜玩んで生きてる〜♪」
「……おい」
「目の前の……はい?」
タナトスは足を止め、背後を振り返る。
「どこまでついてくるつもりだ……?」
「アイナさんのことは気にしないでください、たまたま帰る方向が同じだけですから〜」
アイナは、どこまでも人の良さそうな、無害そうな笑顔をタナトスに返した。
といっても、彼女の場合、常時この無垢な笑顔を浮かべているのだが……。
「むっ……」
敵意も裏もまったく感じられない穏やかな笑顔でそう言われてしまうと、無理に追い払うことはタナトスにはできなかった。
「あ、ごめんなさい。自分のことを名前で呼ぶなんて子供っぽいですよね? 治そうとは思っているんですけどつい……」
「いや、別にそれはお前……あなたの勝手だが……」
「別にお前でいいですよ。あ、でも、できればアイナと名前で呼んでくださいね」
そう言って、アイナは優しい笑みを深める。
「解った……アイナ……」
「♪〜」
タナトスに名前を呼ばれると、アイナはとても嬉しそうにハミングした。



「…………」
朝日が昇り始める頃、ディーンは庵に戻って杯を傾けていた。
アンベルは師の隣に横座りして、彼の杯が空になる度に酒を注いでいる。
ディーンが正装から着流しに着替えており、アンベルがサングラスを外していたこともあり、二人の姿は師弟というよりまるで『旦那と遊女』のようにも見えた。
しっとりとした雰囲気を裂くように、突然銃声が響く。
「無粋な……」
ディーンの左手の人差し指と親指の間に一発の弾丸が摘み取られていた。
「お前まで呼んだ覚えはないんだがな……」
左手の二本の指で弾丸を握り潰すと、右手に持った杯の酒を一気に飲み干す。
「フッフッフッ、そうつれないことを言わないでくださいよ」
声と共に拳銃の撃鉄(ハンマー)を起こすような音が聞こえた。
次いで響く銃声。
「…………」
ディーンが額の前にかざした左手の人差し指と中指の間に一発の弾丸が挟み込まれる。
「フッ!」
さらなる銃声が響くと同時に、ディーンの左手が一瞬ぶれ、次の瞬間には指と指の間全てに弾丸が挟み込まれていた。
「これで五発、次で……」
「ラストォォッ!」
「そこかっ!」
六発目の銃声が響くよりも速く、ディーンは挟んでいた弾丸を手放し、五本の指で前方へと弾き飛ばす。
四発のうち一発は新たに飛んできた弾丸とぶつかり合い、残りの三発は発砲者へと迫った。
「おっと、危ない」
発砲者は、三発の弾丸をすり抜けるようにして、前へと躍り出る。
「ハァッ!」
躍り出た白い人影は長い銃身(ロングバレル)の回転式拳銃(リボルバー)を腰へ引き戻すと、突きだした左手に1mを超す小銃(ライフル)を出現させた。
「遅せえよっ!」
数メートル離れた庵に座っていたはずのディーンが、白い人影の眼前に現れる。
ディーンは両腰に差した斬鉄剣を抜刀するなり、白い人影へと斬りつけた。
「クッ!」
重なる、斬撃と銃撃の音。
「ふん……」
「フッ……」
小銃の機関部(尖端)が、対峙する二人の間に落ちた。
それ以外には二人に損傷らしい損傷はない。
弾丸が斬鉄剣を狙い撃ったのか、斬鉄剣が弾丸を打ち落としたのか、二振りのうち一振りは相殺され、残り一振りが小銃の尖端を見事に切り落としていた。
「フフフッ、勝手にひとの愛銃をカスタムし(切り詰め)ないで欲しいですね」
尖端の短くなった小銃が白いロングコートの『中』に消え去る。
「そんなに大事な骨董品(アンティーク)なら家に飾ってろ」
ディーンは斬鉄剣を両腰の鞘へと収めた。
「骨董品は酷いですね……まあ、確かに実用性より趣味に走っているのは認めますけどね」
真っ白な男は、腰のガンベルトから回転式拳銃を引き抜く。
銀色の回転式拳銃は、銃身長7.5インチ、45口径のシングルアクションだった。
銃器自体が殆ど普及していない、火縄銃すら貴重品である極東ならともかく、最先端の科学技術が普及している西方では、こんな『古い』形の銃を実用している者はまずいない。
今時、シングルアクション……発射の度にハンマーを一回一回起こさなければ撃つことが出来ない銃……を使うのは余程の物好きだけだ。
現に、ディアドラ・デーズレーの使う4インチ、38口径のステンレス製(シルバーモデル)の回転式拳銃もダブルアクション……ハンマーが起きてなくても、引き金を引く力でハンマーが起き、そのまま発射できる機構を持った銃……である。
「装填完了……お久しぶりですね、ディーン」
真っ白な男は手間のかかる薬莢の排出と弾丸の再装填作業を終えると、ディーンに向き合った。
「よくもまあ、そんな面倒なギミックの得物を使う気になるな……」
ディーンは呆れたように呟く。
一発ずつしか行えない排泄と装填など、ディーンなら絶対に御免蒙(こうむ)りたいチマチマとした作業だった。
「それが趣味(美学)というものですよ」
真っ白な男は、銃口に一度接吻した後、拳銃をガンベルトにしまい込む。
「美学ねぇ〜?」
ディーンは改めて男の姿を注視した。
どこまでも真っ白なスラリとした長身の男。
髪は元より瞳までも白く、纏う衣装も白ずくめだ。
白の上下(シャツとズボン)に純白のロングコートを羽織り、靴と手袋も当然のように白。
無造作に腰まで伸ばされた白髪は、繊細で艶やかな輝きを放っていた。
彼の外見で白くないのは、ズラしてかけられた紫の色眼鏡(サングラス)ぐらいである。
「なんですか? ひとをマジマジと見て……」
「別に……」
ディーンは視線をコートの下のガンベルトに向けた後、左肩に背負われた円筒の大きなバックに向けた。
「ただ、そんな玩具より、そのゴルフバックの中身を使ったらどうだ?……と思っただけだ」
「フッ……あなたは『挨拶』代わりに星斬剣を抜くのですか?」
真っ白な男はシニカルな笑みを浮かべると、円筒のバックを肩から下ろす。
地に触れたバックはドスンといかにも重そうな音をたてた。
「まあ、星斬剣、星貫槍(せいかんそう)、星砕甲(せいさいこう)の三傑に比べればこれも玩具ですけどね」
真っ白な男はバックを開け、中から騎兵槍(ランス)のような武器を取り出す。
ランスのようなと言ったのは、ランスにしては短いからだ。
普通のランスは馬上で扱う性質上全長300cm〜400cmもあるだが、このランスは180cm前後(男の身長より少し低い程度)しかない。
柄は両手で丁度握れる位の長さで、笠状の鍔(バンプレート)を挟んで三角錐のような先端が細くなっていく円柱が大半を占めていた。
つまり、全長が短いことを除けば、何の変哲もない西方風のランスなのである。
色は例によって真っ白だが、よく見ると円柱全体に様々な模様や象眼がなされており、とても豪勢な武具(美術品)だった。
「…………」
真っ白な男は無言で、右手に持ったランスを軽々と振り回した後、ピッとディーンの喉元へと突きつける。
「試してみますか? 星斬剣(最強の剣)には遠く及びませんが、斬鉄剣(あなたが趣味で使っている剣)とならいい勝負になると思いますよ?」
「ふん、趣味とは言ってくれるな……」
ディーンは微笑を浮かべると、両手を両腰の斬鉄剣の柄へと添えた。
「あなたが星斬剣を滅多に使わないのは……威力がありすぎるからだけではない……斬鉄剣(その剣)があなたと魔女とを繋ぐ唯一の……とっ!?」
大気を貫くような爆音が発生したかと思うと、ディーンと真っ白な男の立ち位置が入れ代わる。
「ゴチャゴチャと煩せえ、一辺死んでみるか?」
いつの間にか抜刀されていた斬鉄剣が鞘に収められると、真っ白な男のロングコートが両肩からバッサリと切り落とされた。
「フッフッフッ、遠慮しておきますよ、冥界には用がありませんので……」
真っ白な男が軽くランスを横に払うと、お返しとばかりにディーンの着物の左肩の部分が弾け飛ぶ。
「ちっ……」
二人は、爆音が響いた瞬間に交錯し、互いに一撃を見舞っていたのだ。
「挨拶はこれくらいにしておきますか……」
真っ白な男は円筒のバックを拾うと、ランスをしまい右肩に背負う。
「で、結局何しに来た? 俺が呼んだのは星斬剣だけで、『制作者』まで呼んだ覚えはないんだがな……」
「あなたが斬鉄剣(魔女の鍛えた剣)だけでは手に余る相手、星斬剣を必要とする相手……職人として興味を持つなというのが無理な話ですよ」
星斬剣を創った男(スターメイカー)は、色眼鏡の中心(ブリッジ)を人差し指でチャキッと押し上げた。



「ねっ、アタシの言った通りだったでしょう?」
柱強奪犯の二人(ルーファスとメイル・シーラ)の前に、一人の少女が姿を見せた。
セルリアンブルー(鮮烈なる青)、少女を一言で表現する言葉。
少女の髪と瞳と爪、そして纏うドレスは鮮やかで強烈な青色だった。
胸と背中を大きく露出し、腰から下の前面に深いスリットの入った青色のドレス。
それだけでは露出過ぎて下品になってしまうので、ドレスの下にフリフリのワンピースのような薄着を着ており、胸元と秘所を隠し、袖口から姫袖(スカートのように広がっている袖口)を突きだしていた。
スカート(ワンピースのティアードスカートのような段差フリル)下から覗くソックスはドレスと同じ青色で、黒いガーターで留められている。
鮮やか青髪は黒いフリルリボンで結い上げられ、首には襟だけの青布が填められ、紐のように細い黒リボンが蝶結びにされていた。
結い上げられた後ろ髪を除く、両サイドの髪はドリルのようなでっかい縦ロールを成して両肩に垂れている。
一見ショートカットのようにも見えるが、実はダブル縦ロールと結い上げの混じったような複雑な髪形だ。
フリルリボンの頂点と、胸元から覗くフリルと、黒いトウシューズには青薔薇のモチーフ(造花)が飾られ(生え)ている。
さらに、首と同じ紐のような細い黒リボンが、ドレスの二の腕と袖に結ばれていた。
厳密には違うが広義に解釈すれば、D(フィンタニアス)やオーバラインに似た感じの衣装である。
「ああ、確かに神柱石でできた神殿(家)があったが……どういう気まぐれだ?」
「んっ? なぜお父様が情報提供したかってこと? まあ、優しき親心って奴じゃない〜? アハハハハハハハッ!」
セルリアンブルーの少女は、無邪気な子供のように笑った。
子供……十四〜十五歳の幼げな容姿をしながら、やけに肉付きは良く(胸やお尻などが大きく)、妙な艶というか過剰な色気を放っている。
幼女のあどけなさと、熟女の艶めかしさが同居したとても鮮やかな少女だった。
「親心ね……はっ、これ以上なく嘘臭い話だ」
ルーファスは、少女の答えを鼻で笑う。
「じゃあ、牙のないライオンは駄目駄目すぎてお話にならないって理由はどう〜? 淫らさで獲物を狩れる程には女として熟しちゃいないものね〜、キャハハハハハハハハハッ!」
セルリアンブルーの少女は、自分の発言(表現)がツボに填ったのか、派手に笑い転げた。
「何がそんなにおかしいんだか……」
「きっと、箸が転んでもおかしい年頃なのでしょう……」
ルーファスの後で、柱を担ぎ上げて待機しているメイル・シーラが、冷たい眼差しで侮蔑の籠もった言葉を発する。
「フフ……ヒャハハ……クスクス……アア〜……」
「…………」
「アアア〜、可笑しかった!」
「ああっ!?」
いきなり、セルリアンブルーの少女が突きだした両手に二丁の自動拳銃(オートマチック)が出現し、銃口が炎を迸らせた。
「アハハハハハハハハハハハハハッ! ヒヒャハハハハハハハハッ!」
片方十五発、計三十発の弾丸がルーファスに向かって一瞬で撃ち尽くされる。
「……でっ?」
ルーファスが握っていた左手を開くと、弾丸がパラパラと零れ落ちた。
「フッフッフッ、別にィィ〜、何となく撃ちたくなっただけよ。アタシ、楽しい時と苛ついた時は、つい銃をぶっ放しちゃうのよね〜」
セルリアンブルーの少女は、出した時と同じようにパッと手品のように黒い二丁拳銃を掻き消す。
「御主人様……この女殺(や)ってしまっても宜しいでしょうか?」
元から冷酷なメイル・シーラの眼差しがさらに冷たくなっていた。
主人に牙を剥いた(発砲した)女が存在していること自体許せないのだろう。
「ふん、それも面白そうだが……」
「御許可頂ければ、今すぐにでも御主人様の前から排除して御覧にいれます」
メイル・シーラの背負っていた棺が大地に落ち、蓋が開いた。
棺の中には、ガドリング砲を始めとするメイル・シーラの各種付属品(アタッチメント)が収納されている。
「アハハハッ、悪いけど人形相手に無駄弾撃ちたい気分じゃないのよ」
セルリアンブルーの少女はふわりと飛び上がり、小鳥のように木の枝の上に留まった。
「ストレスが溜まった時にでも相手してあげるわ〜、射撃の木偶人形(標的)としてね〜」
「お待ちなさい!」
メイル・シーラの両手にガドリング砲が装着される。
「嫌よっ!」
「うっ!?」
爆音のような銃声が響き、メイル・シーラが吹き飛んだ。
いつの間にか、セルリアンブルーの少女の右手に超巨大な銀色の回転式拳銃(リボルバー)が握られている。
「あん〜、結局無駄弾撃っちゃった〜♪」
セルリアンブルーの少女は、うっとりとした表情で己が愛銃を見つめていた。
「くっ……よくも……」
吹き飛ばされたメイル・シーラが戻ってくる。
弾丸の直撃を受けたのか、左手のガドリング砲が無惨に破壊されていた。
「あら、一応反応できたんだ? 防御するなんて生意気な木偶人形ね〜」
セルリアンブルーの少女は文字通りメイル・シーラを見下して、フフンと嘲笑う。
「もう殺します!」
メイル・シーラの残った右腕のガドリング砲が、物凄い速度で弾丸を撃ち出した。
「アハッ! アハハハハハハハハハハハハッ!」
ガドリング砲の掃射を枝から跳躍してかわすと、セルリアンブルーの少女は超巨大回転式拳銃を連続で四回発砲する。
メイル・シーラは、爆撃の如き破壊力の弾丸から逃げながら棺の傍まで後退すると、蓋を『壁』のように押し立てて、自らの姿を覆い隠した。
「フフフッ、無駄無駄無駄アアアッ!」
再び木の枝に着地したセルリアンブルーの少女は、超巨大回転式拳銃をスイングアウト(シリンダーを左に開く)させると、排莢し、スピードローダーを使って全弾丸を一気に装填する。
そして、再び発射された五発の弾丸が、メイル・シーラの隠れる『壁』へと叩き込まれた。
「くっ……ううぅっ!?」
かってカーディナルの火球さえ遮った壁が、背後にいたメイル・シーラごと派手に吹き飛ばされる。
「アハハハハッ! 逝っちゃえ逝っちゃえっ!」
一瞬で弾丸の再装填を終えると、壁と共に吹き飛んでいくメイル・シーラに向かって次々に弾丸が撃ち込まれた。
「つうう、あああああああああぁぁっ!?」
弾丸は壁こそ破壊できないものの、一発一発が爆弾のような爆発を起こし、メイル・シーラを吹き飛ばす。
「ああん〜、カ・イ・カ・ン〜♪ アタシの方が先に逝っちゃいそうよ〜、ウフ、ウフフフフフフフッ〜♪」
セルリアンブルーの少女は、明らかに発砲の度に恍惚(エクスタシー)を感じているようだった。
「あん、もっとよもっと、もっと踊って〜、アタシのためにィィ〜♪」
瞬時に弾丸を再装填し、一気に全弾丸ぶっ放す……といった行為を何度も何度も繰り返す。
何度も吹き飛ばされるうちにメイル・シーラは壁と引き離されており、仕留めようと思えばいつでも仕留められるのに、セルリアンブルーの少女はわざと弾丸を直撃させず、爆風で彼女を吹き飛ばし続けて弄んでいた。
「ああ〜、一撃で吹き飛ばせるのに、わざと外して嬲るのって……この焦らされている感覚が最高にイイイィィ〜♪」
速くあの冥土人形を滅茶苦茶にしたいのに、わざと御預け……自分を焦らすことで、逝きそうで逝けないもどかしい快感を味わえる。
「ああ、でもでも、そろそろ逝っちゃおうかな〜? 派手に散っ……」
「お前が散れ」
白銀の剣が背後からセルリアンブルーの少女を刺し貫いていた。
「え……あれ?」
セルリアンブルーの少女は何が起きたのか解らないといった表情で枝から落下していく。
落下するセルリアンブルーの少女と入れ代わるように、ルーファスが枝の上に立っていた。
「目の前の戦闘(悦楽)にひたり過ぎだ、馬鹿。ここまで隙だらけな強者(奴)は初めて見たぞ……」
ルーファスは呆れ果てたといった感じで嘆息する。
「痛(い)ったい〜……もう、逝きそこなっちゃったじゃないの〜」
バサバサっといった羽ばたきの音と共に、セルリアンブルーの少女の声がルーファスの背後の空から聞こえてきた。
「ほう……」
ルーファスが眼下に視線向けると、そこには白銀の剣(ライトヴェスタ)が大地に突き刺さっているだけで、刺し貫かれたはずのセルリアンブルーの少女の姿が消えている。
「どうせ刺されるなら剣なんて野暮なものじゃなくて、もっと熱くて硬いモノが良かったわ〜」
セルリアンブルーの少女は、背中から生やした蝙蝠のような青い翼を羽ばたかせて、ルーファスの背後の空に浮いていた。
「品のない奴だな……しかも、馬鹿だ」
ルーファスは再び呆れたように溜息を吐く。
「あん、酷い〜、アタシは馬鹿じゃなくて淫乱なだけよォォ〜……なんてね、ウフフフフフフッ〜♪」
セルリアンブルーの少女は、ライトヴェスタによって刺し貫かれた部分を撫でながら、とても楽しげに嗤った。
「お前、ただの使い魔じゃないな?」
「フフフッ、アタシの名はメルティ・マリア、お父様の忠実なる使い魔、それ以上でもそれ以下でもないわ〜」
「お父様ね……」
メルティ・マリアと名乗ったこの少女が、誰の使い魔なのかは解っている。
最初に現れた時、自分の名は名乗らなかったのに、誰の『使い』かだけはハッキリと名乗ったからだ。
「気安くメルマリアって呼んでくれていいわよ〜。じゃあ、そういうことで今日のところはこの辺で……次に会った時にはアタシの昔の名前や肩書きなんかも教えてあげるわね〜♪」
ダルク・ハーケンなどと比べると小柄で、可愛くも見える悪魔の翼が激しく羽ばたき、メルマリアを上昇させていく。
「いや、別に聞きたくも……」
「バイバイ〜♪」
メルマリアは上昇を続け、青い空へと吸い込まれるように消えていった。













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一言感想板
一言でいいので、良ければ感想お願いします。感想皆無だとこの調子で続けていいのか解らなくなりますので……。



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